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不協和音
カーテンの隙間から射し込む光に気付いて目を覚ました。枕元のスマホで時間を確認すると、アラームをセットした六時の十分前だ。僕は、アラームを解除してベッドから降りる。制服のシャツとズボンに着替え、ブレザーとネクタイ、鞄を持って部屋を出た。
リビングに入って、ソファーに荷物を置く。洗面所に行って、顔を洗い髪の毛を整えてから、リビングに戻りキッチンに入った。
手早く二人分のお弁当を作っていく。昨夜の残りのおかずと、茹でたブロッコリーと甘めの卵焼きを詰める。隙間に不恰好なタコさんウインナーも入れた。二段弁当のもう一段に、セットしておいた炊飯器からご飯を詰めて冷ましておく。
それから、簡単に野菜スープとハムとチーズのサンドイッチを作った。スープをカップに入れ、サンドイッチをお皿に乗せてテーブルに置く。ブラックのコーヒーとカフェオレもテーブルに並べた所で、リビングのドアが開いた。
「悠ちゃん、おはよう」
「ああ…」
僕と同じ制服のシャツとズボンを着て、無表情に入って来た彼が、ブレザーとネクタイと鞄をドアの側に無造作に置く。綺麗な茶色に染められた髪をガシガシと掻きながら、僕にチラリと視線を向けた。
「ご飯出来てるよ…。食べよ?」
先に席に着いて僕がそう言うと、彼は無言で僕の向かい側の席に着いた。
彼は、花森 悠希(はなもり ゆうき)。僕、花森 玲(はなもり れい)の兄さんだ。だけど、血は繋がってはいない。僕が二歳、兄さんが三歳の時に、僕の母親と兄さんの父親が、お互いに子供を連れて再婚したから。僕も兄さんも、物心つく前に一緒に暮らしていたから、本当の兄弟だと思っていた。三年前に、僕の母さんが亡くなるまでは……。
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