見えなかったんだ

1

怖くない。
ただ飛び降りれば良いだけだ。

町外れの橋の上。
乱反射する川面を見詰めて、私はじっとタイミングを計る。

　曲がりくねった一級河川。
中州に打ち寄せる波。
遠い山並みが、薄紫に暮れなずむ。

　冷たい夕風に髪をなぶられて…
私は一人、川面を睨んでいた。

飛び降りるなら、今しかない。
なのに、どうしてそれが出来ない??
迷えば迷う程、押し込めた恐怖が頭を擡(もた)げる。