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……ええ。
以上が、彼の地に伝わる〝王女ソフィアの物語〟です。
長い時間をいただきまして、ありがとうございました。決して気持ちのいい話ではありませんが、何かの役に立つのではと思いお話をさせていただきました。勉強の合間の僅かな気分転換になったのであれば幸いです。
ただ、王女様。
私はひとつ、貴女に伝えたいことがあるのです。
それは、この話の結末を今後も忘れないでほしい、ということです。
……静かにお聞きくださいね。
実は、私を今回この城に呼んだのは、貴女の妹様なのです。
ご依頼は〝自分の姉に外の世界の話をしてほしい〟というものでした。もしかしたら妹様は〝王女ソフィアの物語〟を知っていたのかもしれません。妹様は、悲しき王女ソフィアと貴女を重ねていたのかもしれません。
ここまで話せば、頭の良い貴女ならばお分かりでしょう。
妹様は、貴女のことを快く思っておりません。
王妃の座は自分が、と考えておいでです。貴女が諸外国に対して強い関心を持っていることを、妹様は利用しようと考えているのです。妹様が貴女に向けている笑顔は、全て偽りのものなのです。
それだけを忠告したく、私はこの依頼を受けたのですよ。
……それでは、長居いたしました。
どうぞ、勉学に励んでください。そしていつの日か、貴女がこの国をより豊かな国に発展させるよう心から祈っております。
では、私はこれにて……。
……私の名前ですか?
……王女様のお耳に入れる程の者ではございません。旅の老婆、とだけで充分です。
ただ、ひとつお教えいたしましょう。
ソフィアのその後です。
ソフィアは老婆の話を聞いた後、国を出てあてのない旅に出ました。
帰る場所はありませんでした。進むべき道もありませんでした。ソフィアに残ったのは、膨大な知識、経験、そして心に開いた穴だけでした。
彼女はその知識と経験を活かし、赴いた国々の人の悩みを解決しながら旅をしました。しかし、彼女はもう誰も愛することはありませんでした。心に開いた穴は大きく、誰も信用することができなくなっていました。
そして、悔やみ続けました。愛すべき国民を救えなかったことを。一番そばにいて見守っていてくれた彼らの、大きな愛に気づけなかったことを。しかし、他の国の人々を救ってきたことは後悔していません。だからこそ、彼女の胸に開いた穴は塞がれることはありませんでした。
今でも彼女は、時折〝王女ソフィア〟の話を語りながら旅をしているそうですよ。
……それでは。貴女の未来に幸多きことを……。
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