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いくつかの国を経由しながら、ソフィアはただひたすらに進んでいきました。
長い時間をかけて山を五つ超えると、やがて水のない国にたどり着きました。
老婆の話の通り、彼らはその不便な地で細々と暮らしていました。ソフィアはこの国の様子を確認すると、谷の底へと降りていきました。
そこにはたしかに、豊富な水がありました。そして、それを街へと運ぶのは容易ではないこと、しかし時間を掛ければ実現可能であることを感じました。ソフィアは街へ戻ると、その国の長に水を運ぶための水路を作ることを提案しました。
〝無理だ〟
〝そんなことできるはずがない〟
そう言う彼らの目は虚ろで、説得には長い月日を要しました。
机上の空論だけでは彼らは納得しませんでした。ソフィアはまず、木道や階段を作って谷へと続く道を整備しました。子供の通行禁止を呼びかけるため、道にいくつもの警告札を立てました。雇った人間とともに谷を降り、谷の底に簡易な水汲み機を作りました。
そうして、彼らの日々の作業を楽にする活動を続けました。人々はそんなソフィアのことを奇異な目で見つめていました。しかし何日もそのような活動をしていると、人々は徐々にソフィアを手伝ってくれるようになりました。
ソフィアは再度、街の長に話をしました。
谷に沈む水をどうやって街まで押し上げるのか。そのためにはどれくらいの人手と時間が必要なのか。この国には高度な技術はありません。それでも今ある物資、理論、技術を駆使してソフィアは彼らを説得しました。彼らはようやく納得し、首を縦に振ってくれました。
水路が完成した頃、ソフィアは成人になっていました。
街の人々は水路の完成を祝い、祭りを開いてくれました。彼らの表情は見違えるように明るくなっていました。ソフィアも自分のことのように嬉しく思い、酒を酌み交わしながら彼らと喜びを分かち合いました。
でも、ソフィアにはまだやらなければいけないことがあるのです。
彼らの祭りが終わる頃、ソフィアは一人、そっと国を出ました。彼らと過ごす日々はソフィアの心を豊かにしましたが、ソフィアは行かなければなりません。ソフィアは進み続けました。
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