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長い時間をかけて山を百も超えると、光のない国にたどり着きました。
地の果てにあるその国は、四六時中闇に覆われ物悲しい雰囲気が漂っていました。特に炉の灯りが届かない路地裏は異質な雰囲気で、暗闇に吸い込まれてしまいそうな邪悪さを感じました。
それでも、ソフィアはすぐに行動し始めました。
人の集まっている集会所や役所に行き、この国の現状を聞きました。そして前回と同様、この国を再生するための協力を仰ぎました。他の国がそうであったのと同じく、人々は聞く耳を持ちませんでしたが根気強く対話を続けようと思っていました。
その時でした。
人混みの中から、ある一言が聞こえました。
その言葉は、ソフィアの心をぐさりと突き刺しました。
〝そんなに人助けがしたいのなら、自分の国ですればいいのに。出しゃばりな人ね〟
――自分の国。
その一言は、長い年月の間に記憶から失われようとしていた、故郷の風景を思い出させました。
振り向くと、そこにいた人々はソフィアからさっと目を逸らしました。
その反応は、水のない国でも、食に飢えた国でも感じたものでした。皆、初めはそうでした。見知らぬ旅人に初めから心を開いてくれる人などいません。それは分かっていたのですが、ソフィアはひどく悲しい気持ちになり、ドアを開け暗闇の中へと走り出しました。
そうです。
ここはソフィアの国ではありません。ソフィアはよそ者で、ここは他人の国でした。
人々にどんなに感謝されても、ソフィアはこの国の人間にはなれない。それは揺るぎのない事実でした。
そんなことはどうでもよかった、はずでした。彼らを助けるためだけに、ソフィアはここへ来たのですから。でも、時が経つとともにソフィアは自分の感情が変化していることに気づきました。
その感情とは、〝誰かに受け入れられたい〟というものでした。
誰かの役に立ち、感謝され、仲間に加えてほしい。愛情が欲しい。ソフィアはいつの日からかそう思うようになっていました。しかし、ソフィアはどこまでいっても〝お客様〟でした。感謝はされど、彼らの家族にはなれません。彼らはソフィアの功績をひとしきり褒め称えると、その充実した気持ちのまま、愛すべき家族のいる家へと戻っていくのです。
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