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真っ暗な街を歩き続けました。胸の底にぽっかりと穴が空いているのを感じていました。
そして、ソフィアは自分の国のことを思い出していました。
もし、あのまま国を出なかったら自分はどうなっていたのか。愚直に勉強を続け、国に更なる発展をもたらせていた? 愛する妹や両親と穏やかに暮らしていた? それとも、誰かに恋をし、結婚をし、温かな家庭を築いていた……?
ふと顔を上げると、路地の裏にひとつの影が浮かんでいるのが見えました。
それは一人の老婆でした。
どっしりとしたローブを纏い、手には滑らかな碧いブレスレットをしていました。それは遠い昔に会った、旅の老婆でした。
今、この場に妹はいません。誰に呼ばれたわけでもない、旅の老婆がそこにはいました。あの日と変わらない姿でソフィアを見つめていました。
ソフィアは引き寄せられるように彼女の元へ向かいました。
〝遠い、遠い国の話をいたしましょう〟
ソフィアはその瞬間、この老婆があの日のように、自分の進むべき道を指し示してくれるのではないかと思いました。
老婆の掌に金貨を滑り込ませると、老婆は静かに語り始めました。
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