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その日の午後……
「自習ばかりじゃ、意味がないじゃん……」
とジュンが、JR港区駅まで帰ってきて、駅前の横断歩道の信号が赤だったので、待っていた時だった。
一台のハッチバックタイプの車が、走り抜けて行ったのだ。
彼は、その車内にいた3人の男の雰囲気が気になり、その車が走り込んでいった方へ行ってみた。
「この先には、東京銀行港支店があったハズだけど……。もう閉店した頃か……」
彼が入って行ってみると、銀行の近くにさっきの車が止まっていて、
運転席に乗っている男は、何故かモンスターマスクを着けていた。
ナンバーを覚えていたので、間違いなかった。
「あれ……? ひょっとして……」
電柱の陰から見ていると、やがて、それぞれ大きなバッグを重そうに下げた、
モンスターマスクを着けた男が2人、駆け足で戻ってきた。
すると、その後ろから、
「こらー、待てー、泥棒ー」
という、つらそうな男性の声が聞こえてきた。
ジュンは、やっぱり、こいつら銀行強盗なんだ! と思いながら、スマホを手にしかけて止めた。
2人の男は、止まっている車のハッチを開けて、重そうなバッグを積みながら、
「おい、どうしてエンジンを止めたんだよー!」
「まったく、バカはしょうがねぇな……」
何故かハッチを開けたまま、運転席に向かった。
ジュンは思い切って、素早く車の後部に近寄った。
すると運転席の方から、
「エンジンが、かからないんだよー」
「バカ野郎、はやくしないと掴まるぞ!」
「こんなボロい車、使うからだ」
そんな会話が聞こえる中、ジュンは必死で2個のバッグを道路に下ろした。
そして、さっきの電柱の陰に戻ると、ポケットの不思議な玉を左手で握りながら、右手の指で輪を作り、その中に車がスッポリ入るようにして覗くと、ある所を口にした。
間もなく玉が熱くなり、ハッチバックタイプの車は男達が乗ったまま……消えた。
まもなく、顔に傷を負ったガードマンらしい2人の男が駆け付けた。
が、道路に残った2個の大きなカバンを開けてみて、
「あれあれカネだ。助かった……。だけど何故、置いて行ったんだろう……?」
「多分、急に怖くなったんでしょう……」
「とにかく、カネが無事でよかったよ……」
彼らは、大きなカバンをそれぞれ持つと、銀行へ戻って行った。
ジュンもホッとして、近くのコンビニへ向かった。
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