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「今の俺でも前の俺でもいいから、俺とつき合ってくれませんか?」
「自分勝手だね」
「そうだよ、自分勝手だよ。助けたのも告白してるのも、全部俺が勝手にしてることだ。でも、俺じゃ駄目かな? 昔の俺がいいの?」
「それは……」
彼の向こうから、朝日が顔を出していた。
いつの間にか、時間が経っていたらしい。
普通なら影が差して暗く見えるはずの彼が、私からはなぜか輝いて見える。
太陽に例えたのは、そのためだ。
恋する相手は輝いて見える、そんなことを聞いたことがあるけれど、その輝きは言葉では表せない。
……やっぱりあなたにはかなわない。
どうしようもなく、私は恋をしてしまうのだ。
誰でもない、あなたに。
「あなたが、あなたの全部が、好き」
「じゃあ?」
「でも、つき合わないよ」
「え?」
自殺なんてしない。
もう諦めたくない。
短時間で私の気持ちをこんなにも変えてしまうなんて、やはりあなたは、恋とはすごいものだ。
「私はあなたと恋をする。だから、こんな漬け込んだみたいなことはしたくない。最初から、ちゃんとあなたと恋をしたい」
「え、つき合えないの?」
「まだ、ね」
また、あなたと恋をする。
皆既日食なんて短い恋じゃなくて、長い長い恋がしたい。
抱き締められながら、そう思った。
<終>
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