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後追い自殺。
私の自殺はそうとしか呼べないし、そうとも呼べない。
私は記憶から目を背けて思い出の中で死ぬのだ。
朝、誰もいないこの時間。
ここで死ぬのは私の本望だと言えるだろう。
「お先にどうぞ」
私はそう言って、きらりと光った指輪を投げる。
綺麗な放物線を描いて、静かな川でしか聞こえないだろうぽちゃんという音とともに、指輪は川に沈んだ。
きらりと光ったのは、何時間も悩んで選んだ宝石だろうか、それともその台座の方だろうか。
決して高くはないけれど、幸せな思い出がつまっている。
「ずっと一緒に居よう」
そう言われて贈られた指輪。
その約束を先に破ったのは、私か彼か。
どちらにせよ、もう一緒にいることはないだろう。
私にとって愛の象徴だったとも言えるその指輪を先に送ったのは、決心を固めるためだけど。
もう、それは私しか知らない。
私だけの、幸せな思い出。
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