152人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前を忘れた事なんて、一度も無かった。」
苦しいと感じる程の腕の強さに、私は戸惑いを覚える。
どうして、あの時私を振ったはずの彼に抱き締められているの…?
就職を機に帰ってこいという両親と話をするために、夏休みに地元へ帰ってきただけだったのに。
まさか、振られた場所で、彼と再会するなんて。
「お前がこの町を離れて、俺の傍から居なくなって…漸く分かったんだ。小さい頃からずっと一緒だったから、当たり前すぎて気付けなかった。俺にとってお前が、大事な女だって。」
今更気付いても遅いよ。
そう言えたら、どんなにいいだろう。
彼の事を忘れたことなんて一度もない。
この町を離れてからも、ずっと。
初めての、恋だったから。
「お前は、もう俺の事なんて何とも思ってないかもしれないけど…もう一度、俺の事好きになってもらえるように、頑張るから。だから…」
「頑張る必要なんて、ないよ…」
だって、私はまだ…
あの日と同じ季節、同じ時間にこの場所で、失恋で幕を閉じたと思った私の初恋は、新たな未来へと歩み始めた。
最初のコメントを投稿しよう!