cup 1

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「いらっしゃいませ!」 「エスプレッソ一つ」 「畏まりました」 「カエ、悪い二万貸して! それとこのこの分払っといてくれるか?」 「ちょっと! タカシ……いい加減にしてよね……」 この店で働き始めたころ、タカシは半年ほど先輩のアルバイト店員だった。 その頃、世間知らずのあたしは、ちょっと強引なところがあるけど、何かと仕事を教えてくれたタカシに惹かれてしまった。 「お待たせしました」 エスプレッソを乗せたカップの下に二万円を挟みトレーを差し出す。 「もう、これっきりにしてよね」 小声で囁く。 「分かってるって!」 本当に分かっているのか、軽い返事が返ってくる。 タカシはお札をカップの下から引き抜き、クシャッとポケットにねじ込んで、デミタスカップを口元にあてると、フーフーと数回冷ました後クイッと煽り、「サンキュ!」と大股で店を出て行った。 「またタカシ君?」 店長のハルトさんが聞く。 「はい……」 「タカシ君、お金借りに来たんでしょ? カエちゃん大丈夫?」 「はい……」 「困ったら相談してね」 「ありがとうございます……」 ハルトさんも元バイトのタカシのことはよく知っているし、お金のだらし無さもよく知っていて、いつもすごく心配してくれている。
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