二人と一人

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竹沢廣太郎とは会社の同期として知り合った。 入社前の研修会で初めて話した時、 「松中さん、だよね?だから皆んなから『まっつん』て呼ばれてるのか」 と言われて、色んな意味でドキッとした。 まず67人もいる同期にまだ一回しかまともにあったことないのに、もう名前覚えてるんですか? そもそも、私のことなんで知ってるんですか? つうかなんで私のあだ名まで知ってるんですか。 恋愛のドキッ、ではなく恐怖に近いドキッ、だった。 顔の良さと、180cm近い身長が相待って同期女子の間では「かっこいい!!」とよく話題に上がっていたけれど、絵に描いたような爽やかイケメンの彼の顔は、イケてるオジ様推しの私の好みではなかったので、盛り上がる女の子たちの話を聞くだけにとどまった。 いつしか彼には長年付き合っている彼女がいることが判明した。 「まあそうだろうな」と思ったし、 これで賛同できない『竹沢くんかっこいい話』につきあわないで済むと内心ホッとした。 それくらい興味もなかったし、これからも深く関わることもないだろうと思っていた。
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