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「ごめんなんて、言わないで。」
「麻里は、俺の初恋だよ」
その言葉に、麻里はゆっくりと顔を上げた。
「ずっと恋愛なんて厄介なものでしかないと思ってた。でも、麻里と出会って初めて女の人を愛しいと思って、人を好きになるってこういうことなんだってやっと分かったんだ。麻里と出会わなきゃ一生分からなかったと思う。…だからもう、謝らないで」
麻里の目からはボロボロと涙がこぼれた。
「…それに、俺の方こそ最後にこんな最低なことして」
「ごめん、は無しだよ」
麻里が先回りして廣太郎の言葉を止めた。
「廣ちゃんに謝られたら私、一体何回廣ちゃんに謝ればいいのか分からない。
…それに、廣ちゃんが想像してる程ショックでもなかったよ。」
そう言いながら麻里は、廣太郎に包まれていた自分の手をテーブルの下におろした。
「廣ちゃんが他に好きな人ができたのはすぐ分かった。ショックはショックだったけど…なんだろう。」
「廣ちゃんもちゃんと苦しかったんだなって。
私からみた廣ちゃんはいつも余裕で、なんでもできて完璧で。私ばっかり空回りしてるような気になってた。
だから、真面目な廣ちゃんが浮気するほど私にちゃんと疲れてたし、ちゃんと辛かったんだなって。…やっと廣ちゃんの素が見れた感じがして嬉しかった。」
浮気されて嬉しかったって、変だけど。と泣き顔で麻里が笑った。
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