この軀から、溢れんばかりの愛を。

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結婚してしばらく後話してくれたのだが、あの日迎えに行った私を見て彼はいたく感激したらしい。 「あんなに髪振り乱して走ってくるとは思わなかったよ」 両親からのお祝いのソファにもたれかかる崇仁は、恥ずかしがって逃げないように私の腰をしっかり抱えている。 「そうでしょうよ」 「コーヒーお代わり欲しい?」と聞いたら案外「欲しい」と言ってすんなり離してくれた。スティック粉末にお湯を入れ、適当に混ぜて戻るといつもの癖で負け惜しみが口からこぼれる。 「私だってたかだか二年であんなに取り乱すことになろうとはね」 崇仁は「ありがとう」と言いつつも折角入れたコーヒーには口をつけず、再び私の腰を抱いた。 「でも、愛菜は俺のこと相当好きだからさ。本当は置いて行くの心配だった」 いつも思うのだけど彼のこうあからさまに自惚れた態度は気に入らない。 「なんせ結婚するくらいだよ」 私の腰に収まっていた彼の左手は、いつの間にか私の首筋を捉えている……私は首筋が弱い。鎖骨の辺りに羽が触れるような軽いキスをして、彼は私の顔を満足そうに覗きこんだ。 「……それで、俺がどんなに愛菜が大好きかは、そんなにわかってないの。今から、教えてあげる」 二人で選んだ壁掛け時計を見やる……午後の10時だ。
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