この軀から、溢れんばかりの愛を。

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「えっ瀬戸口さんー、こう言っては何だけどー……大丈夫ですか?」 感情が消えた。違う、意図的に消したんだ。 「大丈夫ってどういうこと?」 私はぎこちなく開いたり閉じたりする後輩の口を放心気味で見つめる。 「ほらだって、彼今、本島に居るんでしょ? こっちなんかより楽しい場所も楽しいこともたくさんあるし……下手したらあっちに永住しちゃうかも」 「失礼でしょ……!」 いつも穏やかな上司のいつにない剣幕に意識を呼び返される。 「そうですね、失言でした。申し訳ありません……忘れてください」 表情が見えないくらい頭を下げている後輩は、決して悪い子ではない。 「あぁーいや……気にしてないから。彼がどうかは別として……そういうのよくある話だし」 ふらっと席を外して用は無いのに目に付いたトイレに入る。鏡に映る自分の顔は酷く情け無い。
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