この軀から、溢れんばかりの愛を。

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あれから数えて十何回目かの金曜日の夜、風呂から上がって髪を拭いていると、崇仁の好きなJ-POPが鳴る。スマートフォンを掴もうとすると去年のトラウマが蘇った。 ——早く出ても遅く出ても変わらないし。 心の準備と言い訳し、サビの部分まで聴いてしまってからようやく通話ボタンを押す。彼の声は弾んでいた。 「愛菜。明後日の夕方、そっちに帰れるよ」 「……うそ」 「ほんと。引き継ぎも終わったから、あとは俺が帰るだけ。明日本島を出るから待っててよ」 「本当に? ほんとのほんと?」 疑り深い私を、崇仁は責めなかった。 「本当だよ。待たせたね」 「……島に着いたら言ってよ」 電話を切ってから、私は赤ボールペンを取り出し壁のカレンダーにバツを付ける。カレンダーにバツをつけるのは、一年ぶりだ。
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