この軀から、溢れんばかりの愛を。

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日曜日はいつも過ぎるのが早いのだけど、その日は随分じりじりと時が流れた。私はずっとスマートフォンを見ている。待ちあぐねてついに生まれて初めて電子書籍を購入した。 5冊目の漫画を読んでいるとスマートフォンの通知音が鳴る。クライマックスだったけど、すぐに画面を閉じた。 「あと、五分くらいで港に着くよ」 心臓が跳ねる。震える指でメッセージを打つ。スマートフォンを置いたまま家を飛び出して、しまったと思ったけどもう足が止まらなかった。 「会いたい」 たった四文字を送信したのかどうかも確かめていない。 脱げそうなストラップのないサンダルに、無駄に長い信号に苛々しながら、それでも港に向かって走る。
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