この軀から、溢れんばかりの愛を。

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約束していた訳ではないけど、崇仁は一週間毎に電話をくれた。 「忙しい?」 「いや、ほんっと忙しい」 彼は大抵のことは笑い声を混じえながら話す癖がある。その声を聞くと安心すると本人には言っていない。 「元気そうでなにより」 「何言ってるんだ、五キロくらい痩せたんだぞ」 「嘘!?」 「うそ」 「またつまらないことを言う」 「ごめんごめん」と謝ったあと、崇仁はしみじみ言った。 「……あと1カ月だなー」 四月からは別の人が本島に出張に向かうので、崇仁はこちらに帰ってこれる。 「……うん」 一年ってこんなに長いんだっけ? と思いながら過ごした日々が終わると思うとほおが緩んだ。それを見られる心配が無いのは電話の良いところだと思う。 「よろしく奥さん」 「まだ早いよ」 「そう? じゃあそう呼べるのを楽しみにしてるよ」 電話を切った後、私はいそいそとエプロンの紐を結んだ。もう料理のレパートリーもだいぶ増えて、母にも「家庭科の成績ヒサンだったのに成長したわね」と言われる程に。
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