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生まれた時から身体が弱かった私が、前世の記憶を取り戻したのは、7歳の冬の事。膨大な記憶は、その時の私には辛過ぎて、丸々1週間寝込んだ。高熱が続く私。両親は必死に看病してくれたのは分かった。そして、自分がどういう身分に生まれたのか理解した時、心底、自分の身の上を呪った。
生まれ変わった私の名は、サーシャ・グレイル伯爵令嬢。よりにもよって、この国の貴族の娘なんかに生まれ変わったのだ。何故、平民にしてくれなかったのだろう。出来ればもう一度、日本人に生まれたかった。
私の前世は、佐藤朱世という女子高生で、ごくごく平凡な日本人だった。黒髪黒目で、大学デビューに髪を茶色く染めてみようか、なんて密かに思っていた程度の。運動全般苦手で、勉強は大好きって程じゃなかったけれど、割合楽しい。って思えるくらいで。
片思いの相手も居たけど、友達と学校帰りに渋谷や原宿で遊ぶのが楽しい、そんな女子高生だった。
家庭研修期間……要するに、高校卒業まであと少しだった年明け半ばのある雨上がりの午後。幼稚園から一緒の幼馴染みの“なっちゃん”こと、田村那智から髪の毛を染めたから見て。って言われて、見に行った日。
美容師専門学校に入学する事が決まっていた那智は、綺麗な“赤”い髪をしていた。それはそれは綺麗に赤で染まっていた。高校の卒業式の時は、どうするんだろう、と思ったものの、綺麗だった。そんな時、私達……いや、正確に言えば、那智がこの世界のこの国に召喚された。
所謂異世界召喚。
それも那智が“勇者”という勇者召喚だった。
普通“勇者”って男の子で、女の子の定番って“聖女”じゃないの? と勇者召喚に巻き込まれた平凡な私は、内心突っ込んでいたけれど。
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