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この国の言葉が分からなかった私は、なっちゃんに説明してもらうまで、状況が掴めず苦労した。そして、なっちゃんから受けた説明では。
「何でも、この国の国境に現れた魔族っていうのを退治して欲しいんだって」
というもの。魔族とは、人間・動植物関係無く、魔力を持って生まれる存在がいて、その魔力が暴走した結果、人間は身を滅ぼすけれど、動植物は動物なら身体能力が上がり、植物なら異常成長するらしい。
その状態を“魔族”と呼ぶ。と説明された。但し。偶に魔力が暴走しても、身を滅ぼさず、生き残る人間を“魔人”と呼んで、思考する事が出来る人間である事から“魔族”より強い……らしい。
「そんなのを、魔力なんか無い私達が斃せるわけ、ないじゃない」
なっちゃんに言えば、なっちゃんはまた相手と話している。結果。
「この世界の言葉が解る私が“勇者”で勇者なら斃せるらしいよ」
「ということは、私達より前にも勇者を召喚しているって事だね」
私の指摘になっちゃんが成る程、と頷く。なっちゃんは運動神経抜群なんだけど、勉強は全然出来ない。と嘆く子。最下位近辺を彷徨ってるとは本人の話だけど、確かに赤点取って補講だ、とは良く聞いていた。ついでに考える事も苦手だった。
「やっぱり、数百年前に勇者を召喚して斃してもらったらしいよ」
その時の勇者は男性で、やはり最初から言葉が通じたらしい。
「その人は、魔族を斃し終わったらどうしたって?」
私が更になっちゃんに尋ねれば、相手はこう言ったそうだ。
「この世界が気に入って、寿命が来るまでこの国に居たらしいよ」
……それって、ウラを返せば、元の世界に帰る事が出来ない、とも言える。気に入ったのかもしれないけれど、寿命が来るまでには、帰りたいって気持ちも持ったと思うんだけど。全く無かったのかなぁ。
ちょっと胡散臭くて全部を信用出来ないけど、とりあえず、なっちゃんが勇者というのは決まりみたいだし、私がなっちゃんから離れるのは嫌だったから、私となっちゃんは、魔族の討伐とやらの為に剣や弓の扱いを教わった。……ただ、私にはどちらの才能もあまり無かったみたいで、身を守るくらいの術しか身に付かなかった。
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