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そうして、異世界から召喚されたなっちゃんと私は、他に2人の討伐メンバーを連れて旅立った。最初は言葉が分からなかった私も、この国に現れた魔族を討伐する年月のおかげで言葉が通じるようになった。
そりゃ18歳で召喚されて5年も魔族を討伐していたら、言葉も覚える。但し、私は召喚された時のこの国の中枢メンバーとやらを信用していなかったから、討伐メンバーも信用していなくて、敢えてこの世界の言葉は話さなかった。
この国に召喚された時。
なっちゃんは気づかなかったみたいだけど、言葉が分からなかった私は、寧ろ相手の表情や仕草に集中していた。
だから、なっちゃんの事を嫌悪しているような表情ばかりのメンバーを、絶対信用しなかった。その理由は、言葉を理解出来るようになってから、程なくして討伐メンバー2人の会話で判った。
「あの勇者、確かに力は強いが」
「あの赤い髪は忌まわしい」
「そう。禁忌の色だ」
「もしや、本当は魔人では無いのか」
「魔人が異世界から来た人間のフリをしている、と?」
「そう。気まぐれで“勇者”になったのかもしれない」
「成る程。魔人は魔力が暴走して身を滅さなかった元・人間。人間のフリは出来るか」
「異世界からの勇者召喚は、我が国特有の秘術だ」
「そうなのか? 魔法国家・ソルリアなら可能では?」
「別大陸の国の事までは解らないが、この大陸では我が国だけだ」
なっちゃんの髪が赤い事が、なっちゃんを嫌う理由だ、と知った日だった。
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