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だけど。事情を理解してから3年余り。
いつ、どこに現れるか分からない魔族の討伐で、なっちゃんとゆっくり話している暇が無かった。そして、召喚されて月日が経っても、何故か、なっちゃんの髪の染色は落ちなかった。
いくら美容院できちんと染めたと言っても1年も経てば、色が落ちてもおかしくないのに、まるで生まれた時からなっちゃんの髪は赤かったように、髪が伸びても色が元の黒に変わらなかった。召喚された時、なんらかの影響が起こったとしか思えなかった。
そうして、召喚された時からおよそ5年。
なっちゃんからこの世界の常識として、年が明けたら年を取る……つまり誕生日制度が無いと聞いていた私は、なっちゃんと2人で23歳になっていた。その年のある日を境に、10日以内には必ず現れた魔族が15日経っても現れなくなった。1ヶ月が経ち、3ヶ月経った頃、召喚された王城とやらに帰還しろ、という通達を受けて、帰還した。
そして、討伐メンバー2人は、中枢メンバーにこれでもか! って程、褒め称えられて褒美も沢山貰ったのに。私となっちゃんは、定期的に貰っていた路銀の残りをそのまま持って行け、と言われて「お疲れ様」も「ご苦労様」も無く、追い出された。
あの討伐メンバー2人は、確かに強かった。だけど、なっちゃんはそれ以上だったのに。なっちゃんの活躍が無かったら、この国は魔族にボロボロにされただろうに。
感謝の一言さえ無く。
忌み嫌うモノだ、とばかりの冷たく蔑んだ目を、誰も彼もが浮かべて。
さっさと目の前から消え失せろ、と追放された。
それどころか、処刑されないだけマシだろう、とばかりに。
それが、魔族討伐の褒美だ、と。恩情だ、と。
そう言っていた。なっちゃんは、それが信じられなかったらしくて、泣きながら、王城の門を叩いた。だけど、門番にも虫けらのような目で蹴り飛ばされ、私は、なっちゃんを立たせて、王城から離れた。
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