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その時、廊下を誰かが歩く気配を感じた。
二階には俺の部屋と宝の部屋しかない。
「だって俺達、本当の姉弟じゃないから」
俺のカミングアウトにもちろん彼女は黙り、廊下にいる誰かも佇んでいるのが分かる。
「親の再婚で小学校の低学年の時に、突然、姉弟になったんだ。
書類上では家族だけど、血は全然繋がってない。
小学校の時の友達は皆知ってるよ。
だから、将来は、結婚?なんかしちゃっても全く問題ない…」
俺はそう言った後、わざと変顔をして冗談だよと一言付け足した。
でも、俺のわざわざ言わなくてもいい告白は、この場の空気を一瞬で重くした。
そして、その重い空気は、廊下にいる誰かまで届いている。
俺は、書類上の家族という欄にしがみついている宝が嫌いだ。
人間の正直な感情は、そういう書面やルールに沿う事なんかできない。
だから俺は、あからさまに、全ての真実をいつも大っぴらにしてるんだ。
隠す必要なんかない。いや、隠したくない。
俺と宝は血の繋がっていない赤の他人で、恋愛だってできるし結婚だってできる。子供だって作れるんだ…
宝も絶対に俺の事が好きで、俺なんか宝の事しか考えられないくらいに宝が好きで、だから、書面上のルールとか体裁とか、そんなアホらしくてクソみたいなものは俺達には関係ないはずなのに。
廊下の方で小さな音が聞こえた。
宝が自分の部屋に入った音だ。
きっと、ベッドに顔を押し当てて泣いてるんだろ?
碧のバカ、私達は姉弟なのに…って。
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