碧、18歳の冬

2/4
前へ
/10ページ
次へ
 俺はもう子供じゃない。  こんな針のむしろのような生活を自分の意思で捨てたいって、そう思ったんだ。   「碧、ほら、見て…」  俺が波打ち際で遠くを見ていると、後ろの方で宝の声がする。  振り返ってみると、宝は砂のお山を作っていた。  そういえば、小さい頃、海ばかりにいる俺と遊ぶために、宝は砂場セットを持って海へ来た。  俺が波乗りをしている間、宝は砂で色々な物を作って遊んでいた。  俺は宝の隣に座ると何も言わずに砂をかき集め、ある物をこしらえた。 「これって、私達の住んでいる家?」  宝は楽しそうにそう聞いてきた。  俺は、それでも何も言わずに黙々とその家を作り続ける。  三角屋根の二階建ての家は、一階に大きなガレージがある。  そして、小さな庭。  俺は砂浜に落ちている小さな木切れを拾い、家のガレージに立てかけた。 「これは、ガレージにある碧のサーフボードだね」  手先の器用な俺は、本物そっくりなミニチュアの我が家を作り上げた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加