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俺はもう子供じゃない。
こんな針のむしろのような生活を自分の意思で捨てたいって、そう思ったんだ。
「碧、ほら、見て…」
俺が波打ち際で遠くを見ていると、後ろの方で宝の声がする。
振り返ってみると、宝は砂のお山を作っていた。
そういえば、小さい頃、海ばかりにいる俺と遊ぶために、宝は砂場セットを持って海へ来た。
俺が波乗りをしている間、宝は砂で色々な物を作って遊んでいた。
俺は宝の隣に座ると何も言わずに砂をかき集め、ある物をこしらえた。
「これって、私達の住んでいる家?」
宝は楽しそうにそう聞いてきた。
俺は、それでも何も言わずに黙々とその家を作り続ける。
三角屋根の二階建ての家は、一階に大きなガレージがある。
そして、小さな庭。
俺は砂浜に落ちている小さな木切れを拾い、家のガレージに立てかけた。
「これは、ガレージにある碧のサーフボードだね」
手先の器用な俺は、本物そっくりなミニチュアの我が家を作り上げた。
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