碧、18歳の冬

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「碧って本当に凄いな~  器用な所はお父さんに似たんだね」  そうやって無邪気に笑う宝の手を引いて、俺は海へと歩く。 「手を洗いに行こう…」  砂にまみれた手の俺達は、普通に当たり前のように手を繋ぐ。  宝も潮風に髪をなびかせて、俺の手を優しく握り返した。  海の水で手を洗い、俺達はまた手を繋いだ。  今度は俺の方が力強く握った。  ゆらゆら揺れる宝の心に俺の想いがちゃんと届くように。 「宝、あの砂の家は、あと一時間もしたら全部消えてしまう。  潮が満ちてきて、波に全部さらわれる…」 「え? あんなに波から離れた場所に作ったのに?」  宝は泣きそうな目で、俺にそう聞いてきた。 「宝…   俺はこう思うんだ。  俺達の家族は、あの砂の家と一緒だって…  父さんと美代子さんは愛し合って再婚して本当の意味の夫婦だけど、俺と宝はやっぱり姉弟じゃない。  お互いこんなに切ない想いを抱えてるのに、家族になんてなれるわけがない…」  俺は黙って聞いている宝の肩を引き寄せた。 「俺と宝は、あの砂の家に住んでるんだ。  波が来ても雨が降っても崩れてしまう、そんな家に住んでる。  子供の頃はそんな家でも楽しかったけど、今は崩れ去るのを待つだけの生活から抜け出したい。  宝と、姉と弟じゃなくて、こうやって手を繋いで海を眺めるそんな夢が見たいんだ。  宝…   俺、もう、限界なんだよ…」
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