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私の隣に碧はいるのに、まだ碧は遠い異国にいるようなそんな心細さを感じていた。
碧は、きっと、私の元から離れたがっている。
それは、悲しいけれど、私は何となく予感していた。
何も言わずに下ばかり俯いている私の顔を、碧の大きな手のひらがそっと自分の方へ向ける。
「宝、明日の朝には、日本を発たなきゃならない。
今夜の今の時間しか、俺達には時間がないんだ…」
碧の顔は苦悩に満ちている。
そんな碧の顔を見ると、私は呼吸をする事が難しくなる。
碧は無理に笑顔を作り、私のおでこに軽くキスをした。
「宝…
俺は、オーストラリアを拠点にして、世界のツアーを回る事に決めた。
だから、しばらくは日本には帰らない。
日本の大会に出る時だけ帰ってくる」
私は胸の底から込み上がる焦りや動揺を必死に隠しながら、碧の目を見て小さな声で質問した。
「しばらくって… どれくらいなの…?」
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