宝、24歳の秋

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 私の隣に碧はいるのに、まだ碧は遠い異国にいるようなそんな心細さを感じていた。  碧は、きっと、私の元から離れたがっている。  それは、悲しいけれど、私は何となく予感していた。  何も言わずに下ばかり俯いている私の顔を、碧の大きな手のひらがそっと自分の方へ向ける。 「宝、明日の朝には、日本を発たなきゃならない。  今夜の今の時間しか、俺達には時間がないんだ…」  碧の顔は苦悩に満ちている。  そんな碧の顔を見ると、私は呼吸をする事が難しくなる。  碧は無理に笑顔を作り、私のおでこに軽くキスをした。 「宝…  俺は、オーストラリアを拠点にして、世界のツアーを回る事に決めた。  だから、しばらくは日本には帰らない。  日本の大会に出る時だけ帰ってくる」  私は胸の底から込み上がる焦りや動揺を必死に隠しながら、碧の目を見て小さな声で質問した。 「しばらくって… どれくらいなの…?」
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