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「まあ、それはさておき。胸のモヤモヤは“喪失感”からくるものだと思います。きっと、僕らだけではなく他にも感じている人は居る筈です」
ギノはこれ以上追及される事を拒むかのようだった。
手をひとつ打って、暗い雰囲気を取っ払う。
飛鳥もそれに倣った。
「だが、それをどうして黙ってるんだ? WGの団員にも今のことを伝えて――」
「まだ、二宮瑞稀がどういった立場にいたのか分かりませんから、混乱を招いてしまうでしょう。もしかしたら、リュストルから潜入員としてここに居たのかも知れませんし」
「それも……そうか」
「WGの仲間が疑い合うのは嫌、ですからね」
苦笑いをもらして、メガネの位置を直す。
もし他の誰かがそういった異変を感じたら、情報を総括するギノの元に自然と集まるだろう。
漸く見えてきた方向性に、緊張感が高まる。
「兎に角、二宮瑞稀がここから姿を眩ませたのは、何か弱点などを掴めたからとも考えられます。油断は禁物ですよ」
「ああ。分かってる」
今まで神出鬼没で居場所も素性も謎だったリュストルに比べ、二宮瑞稀は出生の記録もあり、研究所にいたということもわかっている。
そこを徹底的に掘っていけば、リュストルにも辿り着けるだろう。
飛鳥は鬼灯を見た。すると鬼灯も同じように目を合わせて、同時にニヤリと笑った。
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