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その青年は憂いを帯びた表情で、何もない手のひらを長い間見つめていた。
赤系の茶色だった髪色は黒色に染まり、髪質もストレートからウェーブっぽい巻き毛に変わった。
顔を上げた時に見える瞳の色はグレーで、以前の彼の面影は見当たらない。
「これが、1パーセント」
ごく小さな光を数秒間 発生させる。
直ぐに消えてしまったが、それを先刻から何度も繰り返していた。
――突然、部屋の扉が音を立てて開く。
「ノックしろって、何度言ったら分かるんだよ」
「多分、何度言ってももう治らないと思うよ」
悪びれもせず入って来たのは、髪の長い女性。
「それより、1パーセント、どう?」
「ああ、初めは体調崩したり、身体が重かったりしたけど――。今はすごくいいよ」
青年は彼女の自由奔放な性格を理解しているようだった。
それよりも、“1パーセント”が気に入ったようで、嬉しそうに口角を上げた。
「……そう、良かった。もっとパーセンテージを上げる事が出来たら、その時は約束を守ってね」
「ああ、こんなもので良ければ いくらでもくれてやる」
「ええ。“光”の与える能力を使って、貴方の“闇”を私に頂戴」
女性は目を細めて笑う。
まるで全てを手に入れたかのように、その顔は凛と美しかった。
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