01. 幕開け

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目元を覆う白い仮面をつけた男が、手を差し出しながら不敵にわらう。 覗く瞳はひどく楽しげ。 浴びる光は冷ややかに。 観客など私しかいない。その舞台から微笑みを零す彼は、うつくしい所作で膝をついた。 引き寄せられるように近づけば、弧を描く瞳は緩やかに冷たい色を滲ませる。 「さぁ、手を」 「…今日、だけですから」 どこまでも酔狂な人だと手を重ねてしまったが運の尽き。予想通りと頷いた彼を、彼のこの表情を、知っているのは私だけがいいと思わせる。 全てを自分中心に動かすことができると自負する彼に、いまだけはと気を許してしまう。 「それはどうだろう。きっときみは逃げないよ」 キザなせりふで囁かれると調子が狂うみたい。 だから、と勝手に結論づけて目を細めると、 彼はこの上なく、うつくしく冷たい微笑みを浮かべた。
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