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distance
遠距離恋愛を経て、もうすぐ一緒に住んで5年。
私と彼の距離は……一番離れても、せいぜい数メートル。並んでテレビを見る時は数センチ。ベッドも同じ。
「あ、ねぇ昨日さぁ」
「……」
すぐ近くにいる彼からは返事がない。
「ねぇ、理央聞いてる!?」
「っせ。何?」
うるせぇですか、そうですか。理央は読んでた漫画を置くと、こっちを見る事もなく今度はスマホを手に取った。カチカチと誰かにメッセージか、はたまたSNSか。すぐに聞こえた着信音が2回も鳴らないうちに取った。
「はい! え? 暇、暇。すぐ行く」
立ち上がって椅子の背もたれに掛けられた上着を取る。
「……どこか行くの?」
私がそう聞くと、面倒臭そうにため息を吐き
「郁美もたまには出かけろよ」
そう言って出て行った。
昨日さ、そっちの大通りに新しいお店が出来てたんだ。理央の好きそうな焼き肉の。 まぁ、いいか。また今度一緒に行こう。
心の距離は随分と開いた気がする。ベッドも同じだけど、寝るだけだからね。お互い、背中を向けて、寝るだけだ。
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