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「え?」 「トムとジェリーじゃなくて、ぐりとぐら!」 「あ、そうだったか……」 ネズミって事だけ聞いてたな。 「で、ホットケーキじゃなくて、カステラ!」 児童文学を学んでた私が、絵本を見て言った一言。 『ぐりとぐらのカステラを焼いて食べたい』 なんて。 「ねぇ、サプライズってこれ?」 「お、驚いたか?」 「ええ、とっても」 「うし! サプライズ、成功!」 ……私の顔を見て、今度は理央がため息をついた。 「完成したら、そこへ連れてって、そこで……言うつもりだった。だから、5年の記念日に間に合うように無理言って……バタバタしてた。ごめん……」 ハの字に下がった眉に…… 「あのねぇ、そこまで設備を万全にして、私が断らないって自信があったんだよね?」 「え? お前……5年も同棲して振るのか?」 「よくある話でしょ」 ハの字眉のまま、理央が固まった。
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