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「寺に行くのに、何でスマホまで置いて行くわけ?」
理央はようやく、私から体を離すと、スニーカーの踵を直し、私の背中を家の方へと押した。“私達の家”の方へ。
「座禅組んできた。俗世から離れたくて」
「郁の考えてることは、良く……分かんねぇ」
分かるでしょ。話を聞かないからでしょ。この距離に気づかない訳、ないでしょう。
「疲れたんだよ……」
私がそう言うと、理央は黙って家まで歩いた。家に入るとスマホを確認した。
唯一の着信は……理央だ。もう一度スマホを置くと、理央へ向き直った。あの言葉を言う為に。
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