逆さにされた君と僕

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なんの前触れもなく 雨が降って 傘がないから 濡れながら歩いていたら たまにはこういうのもいいねって いたずらっぽく君が笑って 隣に並ぶから 嬉しいような恥ずかしいような 困ったような待っていたような そんな複雑な気持ちを 仏頂面の下に隠すのに必死だった あのときなんだ はじめて僕らが出逢ったのは 同じ電車に乗り合わせていたって 同じ教室の中で授業を受けていたって お互いに お互いが 風景のひとつでしか無かった筈で あのときから 僕らの砂時計は逆さにして置かれたんだ 砂が落ちきるまでしか同じ時を刻めないのに あの雨の日の僕らはそんなこと知る由もなく
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