またね

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「あの」 それは通り過ぎる寸前だった。 今まで はるか遠くで見ていたあなたが ずっと近くで 俺を見つめていた。 「毎日、通っていらっしゃいますよね?」 あなたは、最近引っ越してきたばかりだった。 職場と自宅をつなぐ道 人混みにも 慣れた頃だと 笑っていた。 俺は 敬語とタメ口の混沌とした表現で なんとか自分のことを話した気がする。 あなたは包み込むような微笑みで聴いていた。 溢れる喧騒も このときばかりは 聞こえない。 聞こえるのは あなたの軽やかな 柔らかい声。
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