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「お疲れ様です」
「お疲れ様でーす」
誰よりも早く休憩室を出ると、自転車に乗り十五分かけて家へと帰る。そんな皐の唯一の趣味は読書だ。本を読んでいる時だけは、現実を忘れることが出来た。
次の日昼近くに起きると、遅い朝ご飯を食べ向かった先は図書館だった。自転車で三十分ほど走った所にそれは建っていた。
この町では一番大きな図書館で、本の種類も多く皐は暇さえあればここで本を読んでいた。自動ドアが開くと、静かな空間が訪れる。
周りを緑で囲んだこの図書館は、老若男女問わず人が訪れる。この日も窓際で新聞を広げているお爺さん、机で勉強している若者の姿が見えた。
今日は何を読もうかな……。
皐はとくに好きな作家がいるわけではなかった。本を選ぶのはだいたいがタイトルと表紙で決めることが多く、あとから有名な作家の物だと知ることもあった。
「ん、これ面白そう。シリーズなんだ。とりあえず二冊借りていこう」
文庫本を手に取ると、カウンターで貸し出し手続きを行う。図書館で読むこともあるが、どこで読むかは気分次第だ。
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