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「違うよ。来て欲しかったからに決まってるでしょ。だって……片岡さん」
「やばっ」
立ち尽くす皐に気付き、皆が一斉に気まずそうに俯いた。皐は席からバッグを取ると、五千円をテーブルの上に置いた。
「か、帰ります」
「あ、待って。片岡さん!!」
呼び止める南の声を振り切るように、皐は急いで店を出た。
「……悔しい」
俯く皐の目からは涙が溢れ、ポタポタと地面へ落ちていく。
馬鹿にされることには慣れたつもりでいた。それでもまだ涙が出るんだ。私にもちっぽけなプライドがあるんだな。
昔からオシャレとかそういったことに無縁で、髪を染めたこともなければカットするのは子供の頃から通う美容院だ。
服は安い服で楽な物を選んで着ているし、メイクはしたことさえなかった。高校の時の友達は自分と同じような、オシャレに興味もない子達だった。でも……。
「オシャレに興味がないとか嘘ばっかり……ただ分からないだけのくせに」
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