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二日後、モニカとサミュエルはポーランドに帰国していた。
「いかがでしょうか?」
この日、モニカは先輩の脚本家に自分の考案した脚本を提出していた。ちなみに、この時サミュエルは大学で日本語の授業をしている。
この先輩の女性はモニカよりひとつ年上で、後輩たちへの指導は「時に優しく、時に厳しく」といったのをモットーにしている、頼れる先輩である。
「こんなアニメみたいな話、本当にあるの? 最初のことを考えて! 私たちは牧場でのほのぼのした話を考えるはずだったでしょ!」
「しかし…あの牧場は観光地ではないのですよ?」
「そうだけどさぁ、こんなにアニメチックにする必要ある?」
先輩にそこまで言われると、モニカは黙り込んだ。すると、懐からスマートフォンを取り出す。
「ちょっ…どうしてケータイを?」
突然のモニカの行動の意図を理解できない様子の先輩は言った。だが、モニカは返事をせずにスマートフォンを操作し、ボイスメモのアプリを開き、そこからある一つのボイスメモを開き、再生する。
そのボイスメモの内容は、あの日、あの模範牧場に行ったときのあずきとの会話からサミュエルから牧場の娘とのやり取りの通訳を聞いているところまでだった。
実はモニカ、取材での出来事を忘れないように全てこっそり音声を録音していたのだ。録音ボタンをオンにしっぱなしの状態にしたスマートフォンを懐に忍ばせていたのだった。
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