第一章

2/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「ついに来たね。」 「ああ、ここまで長かったですよ。運転、疲れました。」 「君には苦労をかけるね・・・。」 車内で二人の男女がそんな会話をしていた。この二人は、中欧の一国のポーランドからこの日本の栃木の那須野が原までやってきたのだ。 女性の方の名はモニカ・マリノフスカ。ポーランドの知る人ぞ知る映画脚本家だが、その実力は中々のものである。白い陶器のような肌、背中の真ん中あたりまであるウェーブした淡いクリーム色のロングヘア、ポーランド人にしてはやや高めの身長、淡い空色の瞳…といった容姿を持っている。彼女の今日のファッションは白いワイシャツの上にベージュの上着を羽織り、ボトムスは黒タイツの上に黒の短パンで靴は銀色のパンプス…といった格好である。 男性の方はモニカの一つ下の高校時代の後輩のサミュエル・レヴァンドフスキ。モニカの助手である。普段は語学教師の仕事をしている。彼はポーランドとオーストリアのハーフだからドイツ語が堪能なため、その能力を生かしてドイツ語の教師をしているのだ。また、彼は日本語も得意で、日本語の読み書きや会話が可能である。オーストリアとのハーフだからなのか、見た目はオーストリア人ぽく、其処らの純粋なポーランド人男性に比べると目立つくらいに背が高くがたいも良い。アシンメトリーにしたライトブラウンの髪、シャープのダークブラウンの瞳、少しベージュみのある肌に整った顔立ちが特徴の男性だ。彼の今日のファッションは下はジーパンに短い靴下の上にスニーカー、上は短い袖の黒いティーシャツの上に白のパーカー、といった格好だ。 二人は高校時代から親しくしている仲である。 この二人がここを訪れた目的は、今度モニカが書く新作の映画の脚本がここ――那須野が原の那須高原にある那須町共同利用模範牧場を舞台にしたものにしたいからここを舞台にした話の脚本を書くためと、それを兼ねての海外旅行・・・といったものである。 牧場の敷地外の何もなく、車道の他の車の邪魔にならなさそうな場所に車を停めれば、二人は車を降りた。(車は勿論レンタカー。)
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!