44人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「それでね、ママはこっちにお引っ越ししてパパと結婚したの。だってこんなにいっぱい人がいる中でママを見つけられたのってすごいことでしょう?」
4歳になった娘の佐奈を連れて、今年も家族であの花火大会へ来た。
同い年くらいの子供が持っていたキャラクターものの袋に入った綿菓子を佐奈が欲しがって、娘に甘い大智が屋台へ買いに行っている。
あまりの人の多さに大智が迷子になって戻って来れないんじゃないかと心配する佐奈を安心させるためにこの話をしたけれど、彼女は思いの外真剣に聞いてくれた。
女の子はやはり王子様が迎えに来てくれるようなお話が好きらしい。
「あっパパ帰ってきた」
「買ってきたよ」
「ありがとう」
嬉しそうに綿菓子を持つ佐奈を彼も満足そうに見ていて、手にはたこ焼きを2パック持っている。
すっかり父親になった大智を感慨深く見ていると、視線に気づいた彼が爪楊枝に刺したたこ焼きを私の目の前に差し出す。
「?」と見ていると「食べたいのかと思って」と言われ口を開けた。
「熱っ!」
「焼き立てだもん」
そう言って笑う彼に、自分が猫舌だから私で熱さを確かめたな?と恨めしく思いつつ、今年もまた夜空に花火が打ち上がる。
最初のコメントを投稿しよう!