とろとろ牛すじのカレー 編

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 その日の仕事は何も進まなくて、ただぼうっとベッドに横たわって、天井を眺めていた。  間抜けな音のチャイムが鳴って出ていくと、そこには誰もいなくて紙袋がドアノブにぶら下がっていた。中にはカレーの入ったタッパーと一緒に大学ノートを破ったメモ書きが入っていた。  「今日の牛すじで作ったカレーです。信楽」  そういや、ぽんちゃんの苗字は信楽だったな、なんて呑気なことを思う。突然呼び出され、突然抱きしめられ、突き放すように距離を置かれた。まだ、状況がうまく飲み込めない。  ぼんやりと、日常が維持されるものだと無条件に信じていた。明日もぽんちゃんが家に来てくれるんじゃないかって、このときの陸はまだ疑っていなかった。
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