第3話

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第3話

(まっっっっっっっっっって!!)  怜音はこの二十四時間の間に何度思ったかわからない切なる思いを心の中で叫び、その場から後ずさった。頭がガンガン痛む。完全にアルコールの匂い。アルコール、そう、昨日は酒を飲んだ。誰と?それは…… 「あ……レオさん、おはよー……」  それは……この目の前で同じベッドに寝ている恩田雅久と、だ。 (いや、ここ、どこ!?って、頭いたあっ………)  うっと頭を抱えていると、大丈夫?と雅久が近づいてくる。その顔には少しだけヒゲが生えていて、やば、と思わず自分の口元を隠した。日々カミソリ負けしてしまうヒゲの薄さであったことに感謝する。いや、それどころではない。今、なぜ、どうして、この……推しアイドルと同じベッドで寝ているのか、という疑問で頭がいっぱいだからだ。 「お……俺……っ、いっ………っ」 「あ。大丈夫?レオさん、めちゃくちゃ飲んでたから……ちょっと待って」  ふああ、とあくびをする雅久は下着一枚でベッドを出て行って、冷蔵庫の中を漁っていた。昨日、ちゃんと買っといたんだーと言ってミネラルウォーターと二日酔い用のドリンクを怜音に向かって持ってくる。いや、腹筋もすごいな……と考えている場合ではない。怜音はそれを受け取ると、え、いや、あ……と何も言えず、そして、自分もバスローブ一枚で真っ裸なことに気づく。 「!?」 「あ。ちゃんと洗って干してるから、多分乾いてると思いますよ!そんなに汚れてないし……匂いも気になんないぐらいのはずー」 「よ、よご……?」 「レオさん、ちょっと吐いちゃったから。ごめん、俺が脱がせちゃったんだけど……気持ち悪いかなと思って。下着も全部一斉に下のコインランドリーで洗っちゃって」  勝手すぎたかな……と困ったような表情を見せる雅久に、怜音は死にたくなった。ガンガンに痛む頭の中で、いや、まじか、俺、何した……?と昨夜のことを思い出していく。
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