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新しい学園は、マケドニアの首都ペラから西へ約四十キロ離れたミエザという土地にあった。
フィリッポス王が、十三歳になった王子アレクサンドロスに高等教育を施す目的で建てた学舎だ。先代王の侍医の息子である、哲学者アリストテレスを教師として招聘して、鳴り物入りで作られた。王子を支える人材を育てるべく、同年代の貴族子弟たちもミエザの学園に集められた。
アレクサンドロスと共に学んだ者は数多くいるが、中でも以下の者と親しくしていた。
王子と同じ十三歳で貴族生まれ、玲瓏たる美貌のヘファイスティオン。
宮廷道化師の子でありながら、物覚えがよく、王の覚えがめでたいリュシマコス。
財務官の子で腺病質なマルシュアス。
それに私、プトレマイオスである。王子よりも八つも年長の私は、彼ら一同がハメを外しすぎることのないように見守る、いわば『お守り』の役目を押しつけられたのだ。
ミエザの学園で起居を同じくしていた五人は、多くの時間をともに過ごした。
私が一番手を焼いたのが、ヘファイスティオンである。人一倍、気が強く、腕っ節も強く、頭の回転が早くて、かなりの皮肉屋だった。教師の発言に含まれる矛盾を指摘しては、さんざんにこき下ろす。とにかく、敵が多かった。ろくでもない悪戯や諍いの発端には、いつも彼がいた。
そのヘファイスティオンと一番仲が良いのが王子アレクサンドロスなのだから、私の苦労は並大抵のものではなかった。
王子はほとんど、ヘファイスティオンに心酔していた。
当然である。マケドニアの次代を担う正当な後継者として、貴族たちに祭り上げられ、母からは溺愛されていた。世事に煩わされることなく、まっすぐに育ってきた。
十三歳のアレクサンドロスは期待をよせられることに倦んでいた。自由闊達で少し悪ぶったところのある、同い年のヘファイスティオンが巻き起こす騒動は、王子にとって新しい世界そのものだっただろう。
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