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高石と一緒に歩いた見慣れた街並みの景色が、風と一緒に流れるような速さで通りすぎていく。
その流れに抗って走りながら、俺の頭に浮かぶのは、彼女の明るい笑顔と、こんな夕暮れどきに彼女と一緒に見たこの景色で。
結末がどうなろうと、俺は、彼女の笑顔と、この景色だけは忘れないんだろうと思う。
そんなことを走りながら思っていた俺の視界に橋が現れて、ちょうどその中程に彼女の姿を見つけた俺は、声の限りに彼女の名前を叫んだ。
「高石ー!」
すると、俺の声に気づいたらしい彼女が振り向き様に、
「菅ー! 遅ーい! いつまで待たせるのよー!」
放った怒声に、勘違いじゃなかったことに安堵した俺は、不覚にも泣きそうになった。
それをなんとか堪えた俺の元に駆け寄ってきて、胸に飛び込むようにして抱きついてきた泣き顔さえ可愛い彼女をしばし見つめてから、俺は宝物でも優しく包み込むようにして彼女を抱きしめた。
「待たせて、ごめん。高石、俺、高石のことが好きみたいだ」
「もうっ!『好きみたいだ』って何よ? 私なんて、入社して割とすぐから好きだったんだからっ!」
「え!? マジで?」
「……そうよ。悪かった?」
「いや、ビックリして、いやそれより、気づいたのは最近だけど、俺も、そうだったんだと思う。高石、俺、今すぐ結婚したいくらい、お前が好きだ」
「私も、結婚したいくらい、菅のことが好き、大好き」
やっと、気持ちを伝えあった俺たちは、夕暮れどきの橋の上でいつまでも抱きしめあったままでいた。
厄介だったモノを手にした俺は、夕暮れどきの彼女の笑顔も、この橋の上での今日のことも、いつまでも忘れることなんてできないだろう。
きっと、何年経とうが、何十年経とうが、この命が尽きるまで、ずっとずっと。
<End>
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