わかばの恋

8/8
1291人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「じゃあ、そうまでして将吾さまを真似したかったのに、どうしてやめたの?」 すると、翔くんはまた気まずそうな顔になった。 「……おまえの大好きな将吾さんは、結婚して完全に手の届かないところへ行っちまったことだし、これからはちゃんと『素の自分』で勝負しようと思ったんだよ」 なんだか、急に不穏な空気になってきた。 翔くんの目があたしをまっすぐ射抜いてくる。 その漆黒の瞳には、狙った獲物を決して逃さない獰猛なまでの「男」が潜んでいた。 ……将吾さんが彼女を見つめていた目に、すごく似ていた。 あたしはどうしても見返せなくて、欄干の外に目を逸らした。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!