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ああ
あああ
苦しいわけじゃ無いんだけど、声を出さずにはいられない。
どこまで歩いたんだろう?
いつの間にか、大きな川にさしかかる。
私の生まれた町は都会でも田舎でもなく、不便では無いけれど、これといった特色も無いベッドタウン。海にも川にも縁が無かった。
でも、そういえば湊人の生まれた町には大きな川があると言ってたな。
その町に生まれた男の子達は、通過儀礼で橋のたもとから川に飛び込まなくちゃいけないんだって。
『湊人は飛べなかったでしょ? だって高いとこ苦手だもんね?』私が問いかける。
すると彼は、『もちろん、飛んだに決まってるだろ?』と胸を張って言いきった。
『嘘だね。信じられないね』
そう言って一向に信じない私に、
『じゃあ一緒に行こう。そんなに信じないんなら今度飛んでやるから』と彼は鼻を膨らませた。
『わかったよ。じゃあ飛べなかったら押したげるね』
私は笑った。
可笑しいっていうんじゃなくて、嬉しくて笑ったんだ。
だって彼の生まれた町に私を連れて行ってくれるって事だもん。
これってとっても素敵で、何か特別な事なんじゃないのかな?
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