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最後の約束
中央広場、大時計の前で私は彼を待っていた。
時間通りに来たためしなんて無いんだけど、それを見越して遅れて行くなんてことは考えられない。
待ってる時間も幸せなんだ……って思うような可愛い女になれたらいいのかな?
いやいや、あなたが早く来れば万事解決するのよ、湊人!
ラインがピコピコと五月蠅いから、ちょっと怒ったウサギのスタンプを入れてみる。
キキーーーッ! ドン!!!!
びっくりして一斉に周囲にいた人たちが音の方を振り返った。
交差点で大型トラックと乗用車が正面衝突している。
女の人の悲鳴。
おじさんが「大丈夫か!!」と叫んでいる。
隣にいた高校生くらいの男の子が「やべぇ」と言ってスマホを向けながら、衝突現場へと向かって歩いて行った。
湊人、巻き込まれてないよね!?
咄嗟にそう思った。
だって交差点の向こう側に駅がある。
小さな黒い煙が上がり、遠くから救急車のサイレンの音が聞こえてくる。
どうしよう? 大丈夫だよね??
その時ピコンと私のスマホが鳴った。
ああ、良かった。きっと湊人からだ。
〈お前大丈夫だよな?〉なんて、そこには私を心配するメッセージがあるはず。
私は手に握りしめていたスマホの画面に目を落とす。
その時、交差点よりもっと近くで、叫び声があがった。
画面を見たはずだった―――――だけど衝撃でその画面は大きくぶれてしまった。
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