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あの日、貴方に出会えて良かったなあ。病院のベッドの上でマジマジと夫の顔を見る。
「何、見てんの?」
「いや、今日は何時まで居られる?」
「うーん、面会ギリギリまでいるよ。不安だろう」
「やった」
私は抱きつきたくなった。
手術は入院して2日目の午前9時からに決まった。全身麻酔は初めてではない。あのウトウトも何にもしないでスウと眠りに落ちる感覚は体験済みだ。だが看護師さんはそんなことを知らないので勇気づけるように笑顔を作りながらベッドまで迎えに来てくれた。
「内藤さん、手術始まります。怖いことなんか無いですよ。この病院の医師はみんな慣れてるんで」
「ええ。私は大丈夫です。でも」
夫がガクガクブルブルしている。
「多分、長いよ、待ってられる?」
私は夫に聞く。
「ああ、手術室の前で待ってるよ」
夫は青い顔をして答えた。
手術は案外と早く終わった。麻酔が覚めてから少し手術室の横の部屋で休み、病室に戻っていいと医師から指示が出た。ストレッチャーで運ばれて行くと、夫が笑顔で私の横に来た。
その時はまさか思ってもいなかった。胸が爆発するとは。
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