胸の爆発

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 しかしなあ。胸が爆発するなんて。私は何だか可笑しくなる。夫はこんな電話があったからビックリしたに違いない。医師は何て言ったのだろうか。 「奥さんの胸が破裂しました」 「何ですってえ」  私はストレッチャーで5階から手術室に運ばれながら電話の様子を想像して、また可笑しくなる。  あの日、貴方に出会えたから、こうして胸が爆発するという緊急事態に陥ってもヘラヘラと笑っていられるんだ。慌てふためく夫の姿を想像すると肩が揺れる。 「内藤さん、なに笑ってるんですか?これから緊急手術です」  乳腺外科の美人医師が心配そうに眉を八の字にした。  手術は無事に成功した。 「内藤さんはねえ、皮膚が薄くて風船に耐えれなかったようです」  シルバーのブルガリの時計ばかり気になって形成外科の医師の話が頭に入ってこない。高そうだなあ。やっぱり、大学病院の医師は収入が違うのかなあ。 「内藤さん、聞いてます?」  私はハッとした。 「はい、皮膚が薄いんですか?」 「そうなんです。乳房を取る手術をしたとき、風船、医療用語で言うエキスパンダーですね。それを入れたんですが、皮膚が薄い人だから大丈夫かなと懸念していました」 「その、私は素人なので分からないんですが、皮膚の薄い人って多いんですか?」  形成外科の医師は「いいえ」と首を横に振る。「滅多にいないです」  私はこれも拒食症の影響なのだろうと思った。15歳の時からだから25年くらいの付き合いになるのだ。
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