涼、夢のような気持ち

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涼、夢のような気持ち

「いいの?アイドルがこんな所にいて。」  あたしは晋ちゃんに問いかける。  文化祭も無事?終了。  グランドでは後夜祭が行われている。  あたしは…晋ちゃんと二人、屋上からグランドを見下ろしている。 「アイドルて。」 「あれだけ囲まれたら、そう呼ばれてもいいと思うけど。」  晋ちゃんのバンド『FACE』は、夏休みにやったライヴが大盛況だったせいか、人気バンドになってて。  他校の生徒もたくさん体育館に集まってて…  ステージが終わった後、FACEのみんなは写真撮影やサイン責めにあって…  体育館は、一時騒然となった。  …情報集めてたはずなのに、そんな事になってたなんて…知らなかったな… 「俺、おまえのキープ君やもん。」 「また、そんな言い方…」 「ええやん。おまえも俺のキープちゃんやし。」 「……」  意味が分かんなくて黙ってると 「おまえ、明日暇?」  思いもよらない言葉。  明日は文化祭の代休。  学校に来なくていいのは助かるけど、家に居て母さんに何か言われるのも面倒で…休みなんてなくていいのに。って…思ってたとこ。 「暇だけど…」 「遊園地っちゅうとこへ行く気ない?」 「………え?」  し…晋ちゃんが? 「どどどどどうして?」  驚きのあまり、あたしの目はきっと真ん丸。  晋ちゃんはそんなあたしの顔を見て、ふっと笑った。 「行きたいんやろ?」 「何で知ってるの?」 「本見てたやん。部室の前しゃがみこんで。」 「……」  口が開いたままになってしまった。  確かにあたし…夏休み前は部室の前の廊下に座りこんで…雑誌を読んでた。  それは、夏休みに行くなら。っていう…テーマパークの特集雑誌。 「誕生日、なんもしてへんし。」 「……あたしの誕生日、知ってるの?」 「学生証に書いてあったやん。」 「いつ見たの?」 「…いつだってええやんか。」 「……」  驚いて口が開いたままだったけど…  それは自然に閉じて。  胸がキュッとなると同時に…  分かってなかったのは…あたしかも。  なんて思った。  晋ちゃんて… 「…ね。」  あたしは、晋ちゃんの肩に寄りかかる。 「…あ?」 「髪の毛に詰め込んだあれ、何?」 「あー…あれはー…まあ、ギターに必要なもん。」 「何?」  晋ちゃんは髪の毛をかきあげて、少しだけ間を空けて。 「…音叉(おんさ)。」  って言った。 「…音叉…」  聞いた事あるな。  何だっけ… 「ふうん…」  あたしはゆっくり目を閉じる。  グランドのにぎやかなBGMを聞きながら、とびきりの一日を思い起こしていた。  あたし…  晋ちゃんのキープちゃん…か。  …ハッキリ彼女って言われたわけでも、好きって言われたわけでもないけど…  どうしてかな。  気持ちが、満たされた感じ。 「明日…」 「んー?」 「また、美味いパイが食える?」  晋ちゃんの言葉、頭の中で繰り返す。  美味いパイ… 「涼?」  晋ちゃんの声を耳元に、あたしは少しだけ眠ってしまった。  そして、あの体育館のドアにぶつかって…保健室で目覚めた時。  晋ちゃんが王子様に見えた…って。  そう口走ってる夢をみた。
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