第一章 西からの景色

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「ねぇ、みなみさんはさぁどんな仕事してるの?」  隣に座っている若い男が話しかけてきた。私より確実に年下だ、長めの柔らかそうな髪を茶色に染めている。今は、こういう髪型が流行っているのだろうか、私は黒髪の方が好みだし、長さだって清潔感のある短い方がいい。  お酒を飲んでいるからさすがに一回り下ということはないだろうけれど、なんだか学生と飲んでいる気分になってしまう。だからだろう、ついつい家庭教師をしていたときに学生に教えるような口調になってしまうのだ。  これが、私が可愛くないと思われる所以の一つだろう。 「その髪、長すぎない?」 「え? 髪? そうかなぁ、似合ってない?」 「あなたに似合う髪型がわからないわ」    私という女は、女が持つ可愛らしさを、たぶん母親の胎内に置いてきてしまった。もともと人見知りな性格でもある、なかなか人と打ち解けることができない。 「ふーん、それもそうかぁ。それでさ、何の仕事してるの?」  話を終わる気はないらしい。仕方なく私は口を開く。 「医療システムの売り込みを担当しているの、ほら、病院とか24時間稼働しているところのシステムの導入やメンテナンスの説明をしているのよ」  私の説明も大雑把なものだったが、茶髪の彼はあんまりピンときていない様子だった。だが、説明はしたのだ、これで満足して私の隣からいなくなってほしい。こんなところに来ていてどうかと思うが、今はとにかく一人になりたい気分なのだ。 「俺、そういうのよくわかんないかも、もっと詳しく教えてよ」  適当に流すものかと思ったらそうきたか!  私がろくにしゃべらないものだから、切り口を見つけて切り込んできたようだ。客に話をさせていい気持ちにさせる、そんなところなんだろうけれど……私も今日は腑に落ちないことがあってあまり話す気にはなれない。  思わず口をつむぐ。
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